お金の毒 - 活動事例1-2

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具体的な成果が見える再生例に関しては私たちの書いた本「『お金の毒』な人々」を読んでいただく事にして、私たちが重視する「人間同士のぶつかり合い」を端的に垣間見ることが出来る例を挙げておきます。すべて事実ですが、業種人名地名等はプライバシーを尊重し、すべて変えてありますことをご了承ください。


■第二章 競売にまつわる意外な事実

さて、山下さんをクライアントとして救済に入っていた私たちのスタッフは、経営再建どころではなくなってしまいましたので、山下さんの権利が認められるよう活動を開始します。
 まずは自分たちでホテルの買い手を見つけてきました。買い取り金額は三億八〇〇〇万円でした。これで買い取らせることにしました。このホテルのレベルからすると、この程度の投資であれば利回りから考えても採算が合います。そして、その投資家との約束で、うまく買い取ることに成功した場合、山下さんが今までどおり営業をしてかまわない、ということになりました。
 山下さんとしては、もともと不動産は会社所有であり、彼女の持ち物ではないので、何も言う権利すらないのですが、思い入れのあるホテルを手放したくはありませんでした。ですから、ホテルの運営ができるという話は山下さんにとっては願ったりかなったりのものだったのでした。
 しかし、裁判所が出してきた競売最低金額は五億円でした。こんな高い金額で落としても利益が出ず、経営が回らないのは冷静に判断すれば誰にでもわかることです。絶対はないけれどもこれを落とすようなバカな奴はいないだろうから、この際、競売にかけてしまって、競売が不成立になった後で、落ちなかった物件を私たちが見つけてきた買い手に買い取ってもらうということで銀行と交渉しようという話になりました。
 しかしながら、お金の毒にあてられた大ばか者はこの世の中には五万といるのです。
競売入札の結果、六億一〇〇〇万円で落とした業者があったのです。これに関しては、どうも銀行が裏で糸を引いていると思われる節もありました。
 実はこのホテルを買い取ったのは、山下さんのホテルがオープンした当時、融資先の南中銀行から経営コンサルタントとして、数カ月間だけ派遣されていた元銀行マンで、現在は地元実業家として有名になっている人間だったのです。彼は売り上げなどを知る立場にありましたから、開業当時から相当の売り上げがあり、どんどん売り上げが伸びているのを目の当たりにしていたのです。
 しかし、ホテルの経営が軌道に乗って直ぐにホテルの経営から離れましたので、その後の展開を知らなかったのです。もし知っていたならば、こんな高値で落とすなどということは無かったと思われます。おそらくは銀行のディスインフォメーションに踊らされたのでしょう。このホテルは絶対に儲かると踏み、銀行と裏で繋がりながら競売で落としたのです。融資先はもちろん競売を仕掛けてきた南中銀行です。つまり、ひも付きだったのです。南中銀行はこれでトーらベールの借入残高相当額を全額回収することが出来たのです。
 これは私たちの完全な計算違いでしたが、絶対ということは競売の場合にはありませんので止むを得ません。
しかし占有権と営業権がありますから、所有権が移転したからと言って、言われたとおり素直に出て行く必要はありません。その後、怖いお兄さんたちが脅しに来ましたが、山下さんには私たちがついていましたので、動じることなく営業を続けました。
 その間に、落札した組織の素性を洗い出しました。結果、東京を中心とした某投資会社が関係している地元の会社YGHが購入したということがわかりました。その社長が山畑氏です。先ほど書きましたように、彼は初期にはこのホテルの経営にかかわっていた人間です。
 このYGHは競売物件などを買い取り、それを転売することで儲けていて、地元では有名な会社だということでした。そういう会社でありながら、今回は物権であるホテルのロケーションに惚れこんでしまい、中に入って経営を見ていたということだけで、採算分岐点をよく調べもせずに銀行の甘い話に乗って思わず手を出したようなのです。惚れん込んだ弱みとはよく言われる言葉ですが、驚くべき悪手を打ってしまった山畑氏。銀行はまんまとツケを山畑氏に回してしまったというわけです。
 しかも、山下さんには私たち「お金の毒研究所」が付いておりましたから、引き渡し交渉は難航します。山畑氏の誤算が続きます。落札者にとって泣きっ面に蜂とはこのことです。しかし、もう落としてしまったのですから、引くわけには行きません。脅しても微動だにするどころか、警察を使ったりして攻撃してくるなど、頑強に抵抗して出て行かない山下さんを見て、背後に組織がついていると見て取った相手側は立ち退き交渉に転じてきました。
 競売で落とし、所有者になったからといって腕ずくで無理やりに出て行かせることはできません。
 もし、出て行かない居住者を強制的に退去させようとすれば、裁判所に強制執行を頼む必要があります。それには、大きな物件の場合ならば数百万円のお金を積み立てなくてはなりませんし、実際に追い出す費用として必要な金額は、裁判所が認める敏速で正確な荷物の運び出し業者や、荷物の一定期間の保管業者の確保、などでさらに数百万円相当にかかるのです。
 加えて、営業ができない期間の遺失利益を加えると数千万円になりますから、それよりは、ある程度のお金を立退き料として支払って出て行ってもらう方が、お金も手間も時間も節約できることになります。
 競売にかけられたからといってすべてすぐに終わりということにはなりません。
交渉の余地はあるのです。
 しかも、今回、ホテルの備品にはすべてロゴが印字されており、もしすべて作り直すとすれば、さらに膨大なお金が必要となってきます。
「それよりは、今のホテルのブランドを、そのまま買い取ってもらう方が買い手にとってもメリットがあるはずだ」と「お金の毒研究所」のスタッフは考えました。そして、その他いくつかの隠し玉を握り、交渉の準備に取り掛かったのでした。
 そして、山下社長がその費用概算を作成した資料を提示した上で、金額交渉が始まったのです。二度の予備交渉の後、これが最後の交渉ということで関係者が全員集まりました。
奇しくも、相手側は当「お金の毒研究所」のスタッフが反社会組織構成員であると誤解し、用心棒を一人連れてきました。非常に緊張した場面での交渉が開始されたのです。
 以下、弊社スタッフの鷲中に語ってもらうことにしましょう。